2021.10.15
幸田 泉

2022年、大阪の市立高校22校→府立高校になります

大阪の公立高校は、最も数が多い府立高校の他に、大阪市立、堺市立など市が運営する高校があります。このうち大阪市立の高校22校が来年、2022年4月1日に大阪府に移管され、府立高校になることが決まっています。

これを巡って今年10月7日、大阪市民5人で作る「大阪市民の財産を守る会」が大阪市長を相手取り、大阪地裁に住民訴訟を起こしました。「高校移管で大阪市民は大損害を被る」と訴えています。

大阪市立の高校が府立高校になると、いったい何が問題なのでしょうか。

(※大阪市立の高校は現在21校。うち3校が再編整備されて1校になるため、2022年4月時点では一時的に学校数が増えて22校になります。また、大阪市立高校という名称の高校があり、22校全部を指す場合は「大阪市立の高校」と表記します)

大阪市立の高校は市民が築いた市民の財産

この住民訴訟は筆者の私も原告の1人になっています。住民訴訟の原告になるには、訴える相手、被告となる自治体に居住していることが条件です。

裁判で勝ったとしても、原告個人に金銭的利益はありません。「みんなのためにみんなを代表して訴えを起こす」と言うのが住民訴訟です。市立の高校が府に移管される問題では、原告は大阪市長に対して「大阪市立の高校は大阪市民みんなの財産なので、大阪府に渡すことは市民全員の損害になる」と訴えているのです。

「市民全員の損害」になるというのは、市立の高校を府に移管するにあたって、高校の土地、建物などが府に「無償譲渡」されるからです。市立の高校は市民が払った市税で整備してきた大阪市有財産、すなわち大阪市民が築いた大阪市民の財産です。それを大阪府に「ただであげる」というのが無償譲渡です。

こつこつ住宅ローンを支払って購入した大切なマイホームを、気前よく他人にあげてしまう人はいないでしょう。大阪市がやろうとしているのはそういうことなのです。

大阪市が大阪府に無償譲渡する市立の高校は、まぎれもない巨額財産です。市立の高校22校の土地、建物は、大阪市公有財産台帳価格で計約1500億円に上ります。もし、民間企業などに売却すれば値段がもっと高くなるのは確実です。

市場価格では倍になるとの見方もあり、仮にその通り3000億円の価値があるとすれば、2031年に開業する鉄道新路線「なにわ筋線」の事業費3300億円に匹敵します。それほどの巨額財産を、大阪市は「高校移管」という名目で惜しげもなく手放そうとしているのです。

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高校移管に教育上のメリットなし
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