2021.07.27
おおさか調査委員会 編集部

「え?これって本当なの?」 その情報が真実なのか、それを基に判断していいか迷うような情報が溢れるいまの社会、ファクトチェックが必要だと考える人が増えるのは当然です。

また、ファクトチェックを専門家だけに任せず、自分でファクトチェックをしようという人も増えています。

ところで、ファクトチェックとは何でしょう。

日本で初めてファクトチェック本を発行した立岩陽一郎・楊井人文著「ファクトチェックとは何か」(岩波ブックレット982)によれば「世の中に影響を与える言説や情報のうち、真偽が必ずしも定かでないものや正確さに疑いがあるもの」を対象とし、また「政治家や有識者など社会的影響力をもった人物の言動も対象」として、「第三者が事後的に調査し、検証した結果を発表する営み」としています。

また、国際ファクトチェック・ネットワーク(IFCN)は綱領を定め、国際的なルールとして、

  1. 非党派性・公正性
  2. 情報源の透明性
  3. 財源と組織の透明性
  4. 方法論の透明性
  5. 明確で誠実な訂正

といった5つの原則を定めています。
参考 https://fij.info/introduction/principles

こうした活動が日本でも注目されるようになったのは、諸外国においてフェイクニュースが大きな問題になったからです。

海外ではフェイクニュースがSNSで拡散されて大問題に

例えば、2016年のアメリカ大統領選挙の結果に影響があったとされるフェイクニュースのSNS拡散、2016年6月のイギリスのEU離脱を問う国民投票におけるフェイクニュースなどはみなさんの記憶にも残っていることでしょう。

こうした背景をもと、世界各国では既存のメディア、新興のネットメディアだけでなく、市民団体がファクトチェックを行っています。

日本はファクトチェック後進国?

我が国においては、欧米ほど大きな問題には至っていないものの、2017年にNPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が立ち上げられています。

またファクトチェックを含む、国内外のフェイクニュースや偽情報への対応状況などをとりまとめた「プラットフォームサービスに関する研究会 最終報告書」を2020年2月に公表しました。

しかし、GoogleやFacebook、Twitterなどインターネットサービスの提供側であるIT企業(プラットフォーマー)の利用者情報の適切な取り扱いの確保のあり方についての検討に留まるなど、もはやファクトチェック後進国となっています。

今年1月、大阪維新の会は「深刻化するデマ情報の氾濫を受け、住民の皆様に正しい情報を知っていただけるよう情報の真偽を客観的事実をもとに調査し、事実を発信していく」として「ファクトチェッカー 大阪維新の会」を立ち上げたことが話題になりました。

政党や政治団体には、情報を発信する自由、批判に反論する自由は当然に認められています。

しかし、前述の世界基準に照らせば、政党や政治団体によるファクトチェックは「非党派性・公正性」の原則から外れていると言わざるを得ません。
ファクトチェッカーWebサイト(外部リンク) https://twitter.com/oneosaka_factck

ファクトチェックとは、丹念に情報を調べて、問題となっている情報の内容の真偽、正確性を検証する方法であり、フェイクニュースを撲滅する手法ではありません。まして、権力による検閲でもありません。

むしろ、言論の自由を守るうえで欠かせない取り組みでなければなりません。

一部の人が信じている「真実」に対し、「デマ」と糾弾する動きの中で進行する「市民の分断」。少しでも緩和されるために、ファクトチェックが果たせる役割は小さくないのではないでしょうか。