2020.10.27
都構想調査委員会

特別区運営に知らされていないコストが年200億円ある!?

10月26日の毎日新聞の夕刊に大変なスクープ記事が掲載されました。

大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算 | 毎日新聞

 大阪市を四つの自治体に分割した場合、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト「基準財政需要額」の合計が、現在よりも約218億円増えることが市財政局の試算で明らかになった。人口を4等分した条件での試算だが、結果が表面化するのは初めて。一方、市を4特別区に再編する「大阪都構想」での収入合計

毎日新聞の請求に対し、大阪市財政局が特別区の年間運営コストを算出したところ200億円程度さらに上乗せになる試算を開示しました。

これにより、維新側の言っていたコストを低く見積もった試算が全て吹っ飛び、隠していたコスト増があることが明らかに。

記事によれば、自治体を分割することで、スケールメリットを失うため、コスト増があり、結果としてこのようになるといいます。

これ自体は当然の常識といえます。

平成24年に開かれた国の第30次地方制度調査会において、大阪府市統合本部自身が提出した資料でも、例として、24特別区に分けた場合、スケールメリットを失い、コスト増があることが示されています。

  • 大阪市を複数の特別区へ再編することにより一定のコスト増は生じる
  • 地方交付税の算定上から導き出せる増加需要額を増加コストとして理論的に算出した結果、24区再編で、約200億円~800億円(推計値)

これは地方交付税の需要額としてることからも、移行時だけの話でなく、毎年の計上コストの増加の話をしています。

金額はともかくとして「自治体を分割することにより、スケールメリットを失い、コスト増となる」のです。

そのはずなのですが、現在の大阪市が出すコストにはコストは一切計上されていません。

特別区の実際のコストを積み上げ試算しなかった維新の会

あるはずのスケールメリットを失うコストが計上されていない。その原因は、法定協議会において、実際の業務から、積み上げ方式で本当に必要な金額を計算していないからです。

現在の試算は中核市並という体なので、その平均的な額はこの程度だろうと見積もったものに過ぎず、実際の特別区運営の業務を積み上げた予算の計算はしていません。

この、あるはずのコストを、自民党などは独自試算をし、訴えています。しかし正確な金額は行政にしか出せないものです。

そのため、法定協議会において、自民党が幾度も実際の特別区コストを、積み上げ方式で試算するよう訴えてきましたが、必要が無いとして拒否されてきていました。

東京都では「標準区」というものを設定し、特別区の基準財政需要額を算出します。

引用:(外部リンク)特別区長会 都区財政調整制度の概要都区 財政調整制度のあらまし

7 普通交付金の算定

(3)基準財政需要額の算定

 基準財政需要額は、各特別区が標準的な行政を賄うのに必要な経費について、国庫支出金等の特定財源を充てる分は除き、一般財源で対応すべき額を算出するものです。

 具体的には、特別区の平均的な規模である35万人規模の団体を想定し(これを「標準区」といいます。)、そこでどのような経費が標準的に必要となるかを設定し、これをもとに、人口規模等に応じて増減させることにより、各特別区の必要額を積算する手法がとられています。

 これは、算定を合理的に行うとともに、各特別区の自主的な財政運営に支障が生じないよう、できる限り自動的、客観的な方法で算定しようとするものです。

引用:(外部リンク)特別区長会 都区財政調整制度の概要都区 財政調整制度のあらまし

これを大阪でも積み上げ方式で算出するよう自民党の川嶋市議が幾度も要求しておりますが、維新会派の委員や、維新議員が務める議長もひたすら算出を拒みました。

以下は特別区設置協定書の取りまとめの令和元年12/26の法定協議会の議事録です。

維新の藤田あきら市議が「東京と違い、財政規模揃ってるので標準区を作る必要は無い」という趣旨のことを言っています。

これのどこが揃っているのでしょうか?

重要な情報が隠されたまま

結局算出はなされないままに協定書は作られ、住民投票に突入してしましました。本来あるはずの分割によるコストは謎のままにです。

報道によれば既に大阪市民の10%もが期日前投票に行ってしまったということです。

都構想、期日前投票は22万人超 有権者の約1割 – 日本経済新聞

「大阪都構想」の賛否を問う住民投票(11月1日投開票)で、大阪市選挙管理委員会は26日、25日までに22万6893人が期日前投票を済ませたと発表した。今回投票できる大阪市民約223万人のうち約10.1%。2015年の住民投票に比べ、約4万4千人増加した。市選管は新型コロナウイルス対策として、投開票日で投票所が「3密」になるのを防ぐために積極的な期日前投票を呼びかけている。24日

この膨大なコストが存在することを知らないままに賛否を決めてしまった市民が居るのです。これは大問題です。

毎年200億円ものお金あれば、どれだけ大阪のための投資ができるのか、という話です。

二重行政として廃止され、大問題になった住吉市民病院。本来の現地建て替え費用が57億円と見積もられていたことなどを知れば、いかにこれが膨大な金額か分かると思います。

維新のデマレッテルは嘘です

現在維新の会は松井一郎市長、吉村洋文知事を中心に必死に今回の報道を「毎日新聞の誤報」キャンペーンを行っています。

その論旨としては「政令市×4」として計算したものだとする内容です。しかしこれは記事を読めば誤りです。

大阪市財政局は特別区とし、正確に出すことはできないとしながらも、現行の大阪市を4分した場合は218億円と計上、さらにここから特別区化で府へ受け継がれる消防などの費用を引いた金額を200億円程度として示しているのです。

また、松井知事と毎日記者の会話映像を見れば、これらは毎日が試算したのでなく、あくまで財政局が試算して毎日の請求に対しだして出してきたもので、毎日を批判するのは筋違いで、印象操作を狙っています。

委譲事務を引いているのですから、この年間コスト200億円は決して「政令市×4」の数字ではありません。

もちろんこれは正確な運営時の特別区試算と言えるものではありません。これは財政局も認めており、簡易試算です。

ですが、こういう方式でしか出せないのは、法定協議会で自民に求められたように「標準区」を設定し、積み上げ試算を行わなかったせいです。

「政令市×4-府移管事業」というある種雑な試算となっいるのは維新の隠蔽が原因であって

ならば正式に積み上げ試算で実際の特別区の標準区を設定し、基準財政需要額を算出すべきなのです。

デマレッテルを貼り火消ししようとするのでなく、有権者に本当の数字を明らかにすべきです。

それが無い以上、現状スケールメリットを失いコスト増となる部分を判断しうる最も信頼性の置ける数字は、今回の財政局試算ではないでしょうか?

特別区に基準財政需要額は無いという詭弁

今回、政令市×4というデマだけでなく、「特別区には基準財政需要額が無い」といったミスリードを松井市長や、維新の足立康史議員が吹聴していますが、これもデマです。

足立議員が言っているのは、東京の特別区は東京都から交付金措置を受ける関係のため、国として特別区の基準財政需要額を算定しないという話をしているだけであり、特別区に基準財政需要額が無いという話では決してありません。

こんな市民を欺(あざむ)く言い訳は話になりません。

上述の通り、東京特別区では「基準区」を設定し、基準財政需要額を算出しています。

これを大阪の特別区でもやるべきと法定協議会では求められ続けたのです。

引用:(外部リンク)特別区長会 都区財政調整制度の概要都区 財政調整制度のあらまし

7 普通交付金の算定

(3)基準財政需要額の算定

 基準財政需要額は、各特別区が標準的な行政を賄うのに必要な経費について、国庫支出金等の特定財源を充てる分は除き、一般財源で対応すべき額を算出するものです。

 具体的には、特別区の平均的な規模である35万人規模の団体を想定し(これを「標準区」といいます。)、そこでどのような経費が標準的に必要となるかを設定し、これをもとに、人口規模等に応じて増減させることにより、各特別区の必要額を積算する手法がとられています。

 これは、算定を合理的に行うとともに、各特別区の自主的な財政運営に支障が生じないよう、できる限り自動的、客観的な方法で算定しようとするものです。

引用:(外部リンク)特別区長会 都区財政調整制度の概要都区 財政調整制度のあらまし

そして出さずにいた結果、隠蔽していた自治体分割によるコスト増がこれまで隠されてきたのです。

隠蔽発覚に開き直る知事市長は反省すべきです

今回の財政局が示した年200億円のコストは本来、法定協議会で求められた時点で計算しておくべきであり、公開し、財政シミュレーションに盛り込み、市民に示さねばならなかったものです。

隠蔽が発覚したのですから、真摯にこの数字を認め、市民に伝えることは市長の役目です。

期日前投票した人のことを思えば、松井市長は謝罪いくらしても足りないほどの不祥事です。

そこで開き直って逆に、理屈にもなってないような論理でデマレッテルとは何事ですか?このような偽装で可決して大阪市廃止しても禍根しか残りません。 維新の会は正々堂々住民投票で訴えるべきです。