「都構想」協定書の新旧比較 ①区の数と設置日
吉村知事や松井市長は今回の協定書は前回のものをバージョンアップしたものだと胸を張っています。前回の協定書より大阪市民にとって良いものになったのでしょうか。冷静に両者を比較して、検討してみたいと思います。
新旧比較「特別区設置の日」
新案では2025年1月1日とされました。住民投票の日が2020年11月1日だと仮定すると、約4年2か月後の年始になります。
旧案では住民投票の日である2015年5月17日から約1年11か月後の2017年4月1日、つまり年度替わりに設定されていました。
新案では移行準備期間をかなり長くとったことになります。これは政令市を廃止し、特別区を設置するためには、相当の準備期間が必要だと認識を改めた結果と思われます。
しかし、その間にもう一度ダブル選挙、市議会議員選挙(2023年4月)が行われることになり、都構想が改めて争点になる可能性があります。
また年度替わりでなく年始とされたのは「住民サービスの提供に欠かせないシステムを安全に移行する観点をふまえ、4日間以上の閉庁日が確保できる」ためとされましたが、年度途中の廃止・設置は予算決算の取扱いなどで混乱をきたさないか心配です。
新旧比較「特別区の名称と区域」
最大の変更点は、特別区の数が5区から4区になったことです。特別区の規模が一層大きくなりました。
都構想における特別区は「中核市並みの権限を持つ特別区」と言われますが、人口規模では中核市よりはるかに大きく、北区(74.9万人)は政令市である熊本市(73.9万人)、相模原市(72.3万人)、岡山市(72.1万人)、静岡市(69.1万人)より大きい規模です。
名称は現在、本庁舎を置く行政区名とされ、「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」となました。旧案にあった「湾岸区」、「東区」、「南区」の名称は廃されました。
また、区の名称について東京都の中央区と北区は同じ特別区制度での同一名称の使用については、行政を進めていくうえで様々な問題や混乱、住民の戸惑いが生じるとして再考を求めましたが、法律の制限がないことや区名として定着していることを理由に第33回法定協議会において維新の会と公明党の賛成で変更しないことが決定されました。
本庁舎の位置は中之島庁舎を本庁舎とする北区を除き、それぞれ特別区の名称となった行政区の区役所庁舎が本庁舎となりました。
(外部リンク)大阪市:第31回大都市制度協議会 資料2 特別区制度(案)13 特別区設置に伴うコスト コスト-9
協定書案に記載はありませんが、移行コスト削減のため中之島庁舎を複数の特別区が共同利用することになったため、例えば淀川区の本庁職員は淀川区役所には84人しかおらず、中之島庁舎に878人もいることになります。
天王寺区の本庁職員についても同様の事態となり、北区の本庁職員も中之島庁舎には636人しかおらず、残る673人は域内の旧行政区役所などに分散することになります。
※人数などは法定協議会資料より