2021.10.15
おおさか調査委員会 編集部

大阪の教育現場は大混乱

大阪市の教育現場ではいま、さまざまな問題が沸き起こっています。

コロナ禍における教育機会の保障として実施されたはずのオンライン授業。そのやり方に端を発し、学校現場から大阪市長に対し「提言」が提出されましたが、現場を混乱させたとして提言者が「処分」するという事案が発生しました。

事の発端は2021年4月、コロナ感染拡大を受け、大阪市立の小・中学校では、松井・大阪市長肝入りのオンライン授業をいち早く実施。

しかし、通信環境が整わなかったり、配布したタブレットの充電機が学校にしかないなど、準備が不十分なまま導入されたこともあって約1ヵ月で中止、翌日からは通常授業に戻すことになりました。

さらに、オンライン授業については、双方向通信ができなかったこと、また一方通行のオンライン学習すらできず、プリント学習となった学校もありました。

双方向ではないオンライン授業は、授業数としてカウントされなかったことから、大阪市の子どもだけ夏休みを短くする、平日の授業数を増やす、土曜日授業を実施する等の対応をせざるを得なくなりました。

※オンライン教育について

文科省は学校教育法施行規則77条の2で、家庭でのオンライン授業を認めているが、その前提は「より効果的な教育を実施するため必要である場合」、「教育上適切な配慮がなされているもの」という条件が付されている。

保護者・教職員の不満も…「255人の提言書」とは

こうした対応に対する不満は保護者だけでなく、教職員からも上がりました。そうした意見を代弁するかのように、現職の校長先生が大阪市長に「提言書」を提出しました。

その内容は「学校は、グローバル経済を支える人材という「商品」を作り出す工場と化し」「子どもたちは、テストの点によって選別される「競争」にさらされ」、教職員は「やりがいや使命感を奪われ、働くことへの意欲さえ失いつつある」と、公教育のあり方を指摘するものでした。

この「提言書」に賛同した多くの保護者や教員が「255人の意見書」を提出。ここまではマスコミにも大きく報道されましたので、ご存知の方も多いと思います。

こうした提言・意見に対し、大阪市教育委員会は「独自の意見に基づいて市全体の学校が混乱していると断言したことで市教委の対応に懸念を生じさせた」として「提言書」を提出した校長を処分、「255人の意見書」も結果的に無視されることとなりました。

これから学校教育はどうなっていくのか

変異を繰り返しながら、猛威を奮う新型コロナウィルス。デルタ株においては、これまで感染しにくいと言われていた子どもにも拡がりつつあります。

教育機会を保障するためにも、今回の反省をふまえ、オンライン授業の環境を整備することは必要です。しかし、このようなやり方で本当に子どもの安全・安心、学ぶ権利を保障できるのでしょうか。

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コロナ禍の裏で、忍び寄る教育の財源の危機
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