大阪発 プロ吹奏楽団 オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラよりご寄稿いただきました
受け継いで伝えていくこと
楽団の命、それはまさしく「音」です。
間の取り方、余韻、イントネーションなど含めて、Shionにしか出せない「音」があります。
そして、その音を作るのは人と時間です。長い歴史の中で多くの先輩方と支えてくださる人々によって市音(Shion)の音は受け継がれ、時間をかけて熟成され、この先も命の音は熟成され続けていきます。
文化・芸術の全てに言えることですが、人間の寿命を超えて、人から人へ何百年も受け継がれているからこそ、そこには価値があるのです。
長年、受け継がれてきた理由、それはきっとどんな時代にであっても、人間が人間らしく、平和な社会を築くために必要であるからこそではないでしょうか。
特に、音楽には人間の奥底にある感情を呼び起こしてくれる力があります。私たちがつい忘れてしまいがちな感情を、時代や人種、立場を超えて気づかせてくれる、そんな不思議な力があります。
その感情を多くの人々と共有するためには、生身の人間が奏でる生きた音が必要であると思うのです。
文化・芸術は誰にとっても身近な存在であるべき
市音時代には屋外の広場や施設で無料のコンサートを数多く行っていました。
ファンの方々はもちろん、通りすがりのおっちゃん・おばちゃん、家族連れ、買い物客などいろんな方達に聴いていただき、喜んでいただいていましたが、そうしたコンサートも今はできなくなってしまいました。
文化・芸術は、特別で、限られた人のものではなく、誰にとっても身近な存在であるべきです。日常の中で思いがけず目にしたり聴いたりしたことが、その人の人生を大きく変えるきっかけになる、そうした役割が文化・芸術にはあるはずです。
特に子どもたちにとっては、そのきっかけとなる機会が多ければ多いほど、未来への可能性がより広がっていくのではないでしょうか。
そうした一人ひとりの出来事が人との繋がりを作り、より良い世界を作る、そんな社会の歯車の一つとして、文化・芸術は必要不可欠な存在だと私たちは信じています。
残念ながら、文化・芸術の価値は、数字など目に見える形で表すことはできません。それゆえに、一部の人々の趣味・嗜好でしかないという誤解だったり、大きな利益を産むものこそが値があるという風潮になりがちです。
Shionが100年目を迎えようとしている事実と、多くの文化・芸術が何百年も生き続けてきた歴史こそが、その全てを物語っているのではないでしょうか。