2022.03.16
野村 友昭

大阪のカジノ・IR計画は今どうなってる?

大阪府・市で誘致計画が進む「カジノを含む統合型リゾート施設」(以下、カジノ・IR)の関連議案が大阪府議会、大阪市会に上程され、審議が続いている。両議会ともに3月末の本会議で議案が可決されると、大阪市夢洲地区へのカジノ・IRの誘致が事実上、確定することとなる。

大阪のカジノ・IRはもともと、2025年開催予定の大阪・関西万博に先立つ2024年の開業予定であった。

しかし当初から無理のあったスケジュールに加え、コロナ禍も重なったことで計画は大幅に遅延し、現計画では29年秋冬頃の開業とされている。

新型コロナウイルスの流行はカジノ・IRを取り巻く環境にも大きな影響を与え、夢洲地区の整備計画や事業者の公募・選定作業は二転三転した。開業時期の延期、相次ぐ応募予定者の撤退、公募要件の修正、事業計画の大幅な変更などが折り重なり、現在の大阪のカジノ・IR整備計画は当初の想定から大きく乖離かいりした内容となっている。

大阪市行政当局が、この変更について住民への説明を十分に果たさず、経緯についても情報を開示しないことに強い不信感と懸念を抱いた大阪市会の自民党会派は、カジノ・IR誘致の是非を問う「住民投票」を実施しようと議会に条例案を提出したが、カジノ推進派である大阪維新の会と公明党の反対で否決された。

前述したように大阪カジノ・IR計画は当初の内容から大きく変更されており、住民生活はもとより大阪全体の将来に渡って大きな負の影響を及ぼすことが危惧される。しかし、府市両議会の会派構成から、議会で否決することは現状ほぼ不可能である。

残された時間はあまりないが、それでも粘り強く、各会派、各議員に働きかけを続けることで反対派の議員が一人でも増えることに一縷いちるの望みを託したい。

以下に、大阪カジノ・IR計画にはらむ深刻な課題について、「事業モデル」「事業計画」「地勢リスク」の三点から解説する。

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大阪カジノ・IR計画にはらむ深刻な課題
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