2022.03.16
野村 友昭

大阪カジノ・IR計画にはらむ深刻な課題

深刻な課題 その① 事業モデル

まずは「事業モデル」である。

そもそも大阪におけるカジノ・IR構想は、コロナ禍以前の活発なインバウンド消費を狙って外国人観光客から外貨を稼ぐのが目的だった。しかし新型コロナウイルスの発生によってその前提は大きく崩れ、方針転換を余儀なくされている。

その最も大きなポイントが以下の通りである。

事業モデルの方向転換のポイント

「ノン・カジノ(観光など)からカジノ(ギャンブル)」へと事業の重点が移されたこと

カジノの主要顧客が「外国人から日本人」に変更されたこと

「世界水準、日本最大」のMICE計画が大幅に縮小されたこと

2019年に作成された「大阪IR基本構想」(以下、基本構想)では、IR全体の年間延べ利用者数2480万人のうち、カジノ施設の利用者は590万人と見込んでいた。それが2021年12月23日に公表された「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)」(以下、整備計画)では、IR全体の利用者数1987万人のうちカジノ利用者は1610万人と、基本構想の3倍近くまで引き上げられているのである。

また基本構想で「世界水準、日本最大」と掲げられたMICEについては規模が大幅に縮小され、「国際会議よりもカジノ」への転換を強く感じさせる。

さらに、基本構想ではカジノ売上想定の比率は「外国人2200億円:日本人1600億円」であったのが、整備計画では「外国人2200億円:日本人2700億円」と、圧倒的に日本人に重きを置いた計画へと変更されている。

加えてカジノ入場料は概ね日本人のみが支払うことになるが、基本構想では130億円だった入場料収入が、整備計画では320億円と2.5倍に膨れ上がっており、入場料が必要な来場者=日本人等を増やす計画であることがここからも見て取れる。

これらの計画変更を裏付けるように、オリックスの担当者は2021年の決算説明会で「もともとインバウンド等を勘案したうえで数年前からやってきたが、今は客は全員日本人、日本人だけでどれだけ回るか、その前提でプランニングを作っている」と述べたという。

カジノ・IR整備は「大阪経済の成長戦略である」と繰り返し喧伝されてきた。外貨を獲得できるのであれば、一歩譲って地域経済に資する側面もあったかもしれない。しかし外国企業を含んだカジノ業者が日本人からギャンブルで金を巻き上げる今の事業モデルでは、成長どころか大阪経済を大きく毀損きそんすることになるだろう。

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深刻な課題 その② 事業計画
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