2020.09.28
都構想調査委員会

「都構想」が実施されると、今まで大阪市が担ってきた事務(行政サービス)はどうなるのでしょうか?特別区の住民サービスは、各特別区で実施されるのが原則。ですが、介護保険事業や情報システムの管理など(効率性や専門性が必要なもの)は、共同して実施することになるようです。

架空の自治体「一部事務組合」

自治体の規模や環境によって、1自治体だけで実施できない事務(行政サービス)が発生することがあります。

例えば、小さな自治体が単独で焼却場を持つのは大変ですから、複数の自治体が人とカネを出し合って一つの焼却場を運営し、ゴミ処理事務を実施します。

そのための組織、いわば架空の自治体が「一部事務組合」です。他にも水防や消防、水道等々、様々な事務で一部事務組合が作られることがあり、小さな自治体ではそれが多くなりがちです。

一部事務組合
一部事務組合(いちぶじむくみあい)とは、複数の普通地方公共団体や特別区が、行政サービスの一部を共同で行うことを目的として設置する組織で、地方自治法284条2項により設けられる。略称は一組(いちくみ)。長は管理者(企業団の場合は企業長)または理事会である。

外部リンク
wikipedia:一部事務組合

意思決定が遅く非効率な組織

一部事務組合は「1つの自治体でできない」という時に、やむを得ず作るものです。時に利害の異なる複数の自治体で運営するわけですから、運営のルール作りも大変ですし、どうしても意思決定が遅くなります。

ゴミ処理の例で言えば、焼却場を更新しようとする際、お金のある自治体と、ない自治体で意見が割れることもあるでしょう。

現在、大阪府内に設置されている一部事務組合

(外部リンク)大阪府:一部事務組合

チェックが効かない一部事務組合議会

一部事務組合は公金を扱いますから、それをチェックするため、参加自治体の議会から代表者が集まり、「一部事務組合議会」を構成します。

ただし、これが通常の議会のようなチェック機能を発揮するのは困難です。年に数回の開催で、各自治体議会からの代表者(一部事務組合議会議員)も、通常1~数年で交代しますから、腰を据えた議論ができません。

また、あくまで各議会の「代表者」ですから、各議会の少数意見の反映は、さらに困難です。一部事務組合の事務局は、たいてい一番大きい自治体の役所に置かれますから、それ以外の自治体議員は、日常的に情報を得るのも手間がかかります。

そして限られた議論の機会も、「各自治体の議席配分」など、ルールに関することで多くが占められてしまいがちです。議席配分は、自治体の人口比か、面積比か、財政規模比か…、という具合にです。

大阪都構想の大きなデメリット

架空の自治体「一部事務組合」は、1つの自治体で完結する業務に比べ、市民と議会の目が届きにくく、ムダが生じやすいのです。

大阪都構想で、大阪市が廃止され、4つの特別区に分割されると、これまで大阪市が1市でできていた事務も、1特別区では担い切れず、4特別区による巨大な一部事務組合が誕生します。

1 一部事務組合
(1)概要
・複数の地方公共団体(以下「構成団体」という。) が、その事務の一部を共同して処理するために設置する特別地方公共団体であり、一部事務組合の判断と責任において運営
・必要な事項を定める規約は、構成団体の議会の議決を経て、構成団体の協議により規定<国(総務大臣)又は都道府県(知事)が許可>
・一部事務組合で必要な経費(負担金等)については、構成団体の議会における審議・議決を経る必要があり、議会の審議の中で一部事務組合の運営を確認

外部リンク
大阪市:第31回大都市制度協議会 特別区制度(案)09 一部事務組合等 P.4

介護保険事業がその代表例で、その事業数は150ほど、予算規模は2500億円ほどになると見込まれます。東大阪市とほぼ同規模の、チェックが効きづらい架空の自治体の誕生です。もしそこでムダが発生したら…、果たしてどうなるでしょうか。

別表 第2-3 特別区が一部事務組合を設けて共同処理する事務

外部リンク
大阪府:特別区設置協定書 別表2-3 P.356

これほど巨大な一部事務組合の誕生は前代未聞で、大阪都構想のデメリットでしかありません。大事なのは、大阪都構想のメリットが、この一部事務組合を始めとする諸々のデメリットを上回るのかどうかです。その冷静な見極めが求められます。

1 一部事務組合
(2)事務事業
特別区が担う事務は、各特別区で実施することが原則であるが、公平性や効率性、専門性の確保が特に必要な事務については、特別区が共同して事務を実施

外部リンク
大阪市:第31回大都市制度協議会 特別区制度(案)09 一部事務組合等 P.5