「都構想」協定書の新旧比較 ③事務の承継
吉村知事や松井市長は今回の協定書は前回のものをバージョンアップしたものだと胸を張っています。前回の協定書より大阪市民にとって良いものになったのでしょうか。冷静に両者を比較して、検討してみたいと思います。
新旧比較「事務の承継」
住民サービスは本当に維持は可能でしょうか?
特別区の設置の日以後は、各特別区及び大阪府においては、各種事務事業のサービス水準及びその内容の必要性及び妥当性について十分な検討を行い、住民サービスの向上に努めることとする。また、大阪市が実施してきた特色ある住民サービスについては、特別区の設置の日以後においても、地域の状況や住民のニーズも踏まえながら、その内容や水準を維持するよう努めるものとする。
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大阪府:特別区設置協定書(案)P.5
これは法定協議会で、公明党の委員が住民サービスの維持・向上を求めた協議をふまえての加筆です。
そのため表現が、「特別区の設置の日以降は…必要性及び妥当性について十分な検討を行い」と住民サービスの(向上も含む)見直しを許容するととれる表現と、「特別区設置の日以降においても…その内容や水準を維持するよう努める」と見直しを許さないと取れる表現が混在しています。
いずれにしてもこれを可能とするためには財源措置が必要です。これを担保するとされているものとして特別区設置協定書「特別区と大阪府の財政の調整」の項に2つあげられています。
市立高校が府に移管された場合
1つめは、「なお、特別区の設置の日の前日までに大阪市立の高等学校が大阪府に移管された場合は、その影響額を勘案して算定するものとする(この場合において平成26年度から平成28年度までの3年度分を平均すると、78.7%)」という記述で、その意味は特別区設置の日までに市立高校が府に移管された場合でも、市立高校運営に必要であった額を勘案して特別区に配分(17億円/年)するという規定です。
2.特別区と大阪府の財政の調整
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(一)財政調整の目的・財源及び配分の割合
大阪府:特別区設置協定書(案)P.6
特別区財政調整交付金の総額の特例
2つめは、「特別区財政調整交付金の総額の特例」として「特別区の設置初期において住民サービスのより安定的な提供を図る観点から、特別区の設置の日が属する年度の翌年度から10年の各年度における特別区財政調整交付金の総額は、(一)の規定にかかわらず、同規定による額に20億円を加算した額とし、大阪府の条例でこれを定める」という規定です。
2.特別区と大阪府の財政の調整
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(四)特別区財政調整交付金の総額の特例
大阪府:特別区設置協定書(案)P.7
しかし、4つに分割された特別区ごとに交付税を計算して合計すると、大阪市の交付税額より多くなります。スケール・デメリットが生じるためです。
法定協議会委員である川嶋広稔市会議員(自民党)らが独自に行った試算では、需要額が増加した結果年額約200億円程度不足する可能性があるということです。法定協議会に提出された事務局の資料でも、不足額は149億円、うち特別区分は98億円となっています。
「特別区設置協定書(案)の作成に向けた基本的方向性について」に対する見解
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大阪市:第31回大都市制度協議会 川嶋委員提出資料