2020.09.04
都構想調査委員会

吉村知事や松井市長は今回の協定書は前回のものをバージョンアップしたものだと胸を張っています。前回の協定書より大阪市民にとって良いものになったのでしょうか。冷静に両者を比較して、検討してみたいと思います。

新旧比較「地域自治区」

紛らわしい「区役所」の呼称

旧案ではこれまでの行政区の区役所を特別区の支所として活用するとしていましたが、新案では旧行政区ごとに地域自治区を設置し、元の行政区の庁舎を「地域自治区事務所」と位置付けるとともに、その呼称を「区役所」とすることにしました。

3.地域自治区
(一)地域自治区の設置

外部リンク
大阪府:特別区設置協定書(案)P.18

また、地域自治区に住民組織として、地域協議会を設置します。

3.地域自治区
(三)地域協議会

外部リンク
大阪府:特別区設置協定書(案)P.21

「地域自治区」制度は、新合併特例法に基づく「合併特例区」などを準用する形で、2004年の地方自治法改正で登場したものです。

旧案の「支所」で担われる事務と新案の「地域自治区事務所(区役所)」で担われる事務の比較では、住民登録関係事務と就学事務、保健福祉センターが中心で、これに「地域活動支援に関する事務」と「地域自主防災の支援に関する事務」が加わったのみで、大差ありません。

これらは地域自治区のもとに設置される地域協議会の活動との関連で付け加えられたと思われます。

しかし、防災については、自治体における防災行政の中心である消防、上・下水道、道路・建設などが、大阪市域においてはほとんど府に事務移管されるため、地域自治区はもとより、特別区本庁においても、実施権限を有さないものになります。

いずれにしても大阪市を廃止して、特別区を設置するのが「都構想」である以上、新しい基礎的自治体は特別区であり、その本庁舎こそが「区役所」と呼ばれるべきでしょう。

その本庁舎が区外の中之島庁舎を含めて分散され、実態がないからと言って、地域自治区事務所を「区役所」と呼ぶのは、大阪市の市役所が残るかのような誤解を与えかねません。