2022.03.16
野村 友昭

深刻な課題 その③ 地勢リスク

最後に、私たちの生命に直接関わる「地勢リスク」について警鐘を鳴らしておきたい。

カジノ・IRの用地である夢洲は廃棄物や建設残土の処分場として埋め立てられてきた人工島である。人工島はその地勢上、避けられない深刻なリスクを二つの面から抱えている。

一つは「地盤の脆弱性」、もう一つはそれに起因する「災害リスク」である。

夢洲の地盤は大きく三層に分けられる。人工的な埋立層と、その下にある海底を形成している沖積層、さらにその地下の洪積層である。

人工の埋立層は廃棄物や焼却灰、浚渫しゅんせつ土砂で埋め立てたもので、震災時に液状化の危険性が極めて高い。

大阪府の「南海トラフ地震対策震度分布・液状化の可能性詳細図(2017)」によると、夢洲のほとんどの場所で液状化の危険度を示すPL値が20~25以上となっており、液状化の危険が「極めて高い」と指摘されている。

液状化が起きると、道路が使用できなくなるばかりか、建造物が沈んだり傾いたりし、水道管などの地下埋設物が寸断されるなどの被害が生じる。

南海トラフ巨大地震等で夢洲が被災すると、ほとんどのライフラインは断たれ、避難も救助もできなくなることが容易に予想できる。

大阪市は、万博およびカジノ・IRを誘致する以前までは「夢洲に液状化の危険はない」と大阪府の調査と正反対の主張を行っていたが、IR事業者が決定し契約交渉を行う段階で突如、液状化の可能性を認め、土壌汚染の対策費とあわせ790億円もの公金を支出することが決定した。

しかしこの790億円はIR事業者側の独自の積算に基づく金額で、今後実際に土地の改良にいくらかかるのかは不透明である。しかもIR建設区域のみの額であり、夢洲の他の区域でも同様の対策を行うためには、現時点で1580億円もの費用が必要と試算されている。

が、おそらくこの程度の金額では収まらないと思われる。当初の目論見より費用が膨れ上がった公共開発事業の例としては関西空港、東京五輪、豊洲市場、辺野古基地など枚挙に暇がないからだ。

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現在も地盤沈下中。そんな対策で大丈夫か?
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